農と食のこと

養蜂に魅了されて3年 純度100%蜂蜜にこだわり

小川 忠宏さん
下小山田町

小川 忠宏さん(51) 下小山田町小川 忠宏さん(51) 下小山田町

 養蜂は、天候に大きく左右されるため毎日の世話が必須。旅行などで長期間留守にすることはできません。しかし、養蜂の奥深さに魅せられた小川さんは、玉川大学の「ミツバチ科学研究会」に参加するなど、おいしい蜂蜜づくりへの研究に余念がありません。
(担当 宮嵜勇也、島崎百梨菜、石川正剛)

 町田市下小山田の養蜂農家・小川忠宏さんは、自身で経営するブルーベリー農園の隣でミツバチを飼っています。純度100%の蜂蜜を「町田のはちみつ」として、JA町田市アグリハウスの全店舗、「ぽっぽ町田」などで販売。さらに、加工品として製造するあめは、蜂蜜本来の香りを楽しめると大人気の商品です。

地域の豊かな自然生かし 養蜂とブルーベリー栽培

巣箱の中の蜜を確認する作業巣箱の中の蜜を確認する作業

 小川さんは、家業である農業を手伝いながらJA町田市の職員として町田農業を支えて来ました。実父の死をきっかけに就農する際、下小山田地区に残された豊かな自然を生かした農業ができないかと考えました。そこで、「農業後継者が減少している今こそ、付加価値の高い生産物で農を生業にしたい」と、町田市では少ない養蜂に挑戦することにしました。小川さんは養蜂はブルーベリー栽培にも良い影響があると知り、ブルーベリー農園も手掛けています。

 当初は分からないことも多く、勉強の毎日でした。愛媛県や広島県の養蜂家の仕事を手伝いながら養蜂のノウハウを学び、採取した蜂蜜の商品化から販売にたどり着くまで、1年以上の時間を費やしました。

加熱・加糖は一切なし 効能高く香り豊かに

小川さんが生産する純度100%の蜂蜜「町田のはちみつ」小川さんが生産する純度100%の蜂蜜「町田のはちみつ」

 蜂蜜は近年、健康づくりや美容に役立つ天然の食品として人気が高まっています。しかし、日本で販売されている蜂蜜のうち、純国産はわずか7%。その中でも加熱処理されていない蜂蜜は大変希少です。

 流通している蜂蜜には、加熱・加糖されたものもありますが、小川さんが販売する「町田のはちみつ」は、そのまま絞った純度100%の蜂蜜です。熱や糖分を加えていないため「約180種類ある天然成分本来の効能が保たれ、香りや甘味を損なうことがない」と言います。また、ミツバチが病気にかからないよう一般的に使われている抗生物質なども一切使用していません。「食の安全が問われている昨今では、より自然なもので安心・安全な蜂蜜を提供したい」と、小川さんは語ります。

 こだわりは他にもあります。ミツバチの巣枠を毎年繰り返し使う養蜂家が多い中、小川さんは毎年必ず全て新しいものに取り替えて使用しています。また、女王蜂の産卵をコントロールして、蜂蜜だけになった巣枠を採蜜しています。これらはコスト面では不利ですが、いずれも不純物を少しでも混入させないためです。

ミツバチを守るため スズメバチとも格闘

 このように、不純物の無い蜂蜜を生産するには手間がかかります。また、瓶詰めも手作業で行うため時間がかかり一苦労。限られた量の蜂蜜しか販売できません。

 スズメバチの被害からミツバチや巣箱を守ることも大事な仕事です。過去にオオスズメバチに刺され病院に搬送されたこともあります。

 蜂蜜の生産には繊細な作業工程が多く、「毎年同じような蜂蜜を採ることは難しい」と、小川さん。苦労が多い中、蜂蜜の奥深さ、何よりこだわった蜂蜜が採れた時の喜びはひとしおです。

 就農して3年。「これからもこだわりの『天然はちみつ』を販売することで、その魅力を多くの人に知ってほしい。そして、熱意のある若い世代に、このこだわりの技術を広めていきたい」と、熱く語ります。

きずな.2017年 秋号_No.46掲載