農と食のこと

先輩生産者からのアドバイスが原点
「支え合う農業」をモットーに
独自の取り組みで地域農業をけん引

髙木 鉄雄さん
図師町

 町田市図師町で農業を営む髙木鉄雄さん(50)は、母・天子さんとともに、今が旬のブロッコリーやハクサイ、ダイコン、カボチャを含む15種類以上の野菜を作り、アグリハウス忠生に出荷しています。息抜きは、5歳と1歳のお子さんと一緒に過ごすこと。「大変な畑作業も子どものためなら頑張れる」と笑顔で語る髙木さんの“農業にかける思い”とは――。

独自の取り組みで生産者を支える

一つ一つ丁寧に収穫したニンジン

 「自分が部会長になったからには、全地区の生産者の売り上げをアップさせたい」「忠生地区だけでなく、野菜部会全体を見て活動したい」――。そう力を込める髙木さんは、平成30年度からJA町田市・野菜部会の部会長として活躍。信念のもと、これまでにさまざまな取り組み・改革に着手してきました。
 まず取り掛かったのは、生産者が野菜作りに専念できる環境作りです。生産者はこれまで、朝の野菜の出荷と夕方の引き上げで1日に2回アグリハウスに来ていました。しかし「夕方も野菜作りに専念してほしい」と考え、担当職員と部会役員で話し合い、連携体制を構築。夕方の引き上げは必須としないことで、時間を確保しました。
 他にも、アグリ販売部役員や各アグリハウスの店長と協力し、各地区のアグリハウスで売り場に並ぶ野菜の量を調整する取り組みも始めました。この取り組みでは、出荷量が多く余裕があるアグリハウスの品物を少ない店舗へ移動させて、全体の出荷量を調整します。これにより、お客さまのニーズに応えられるだけでなく、野菜の売れ残りを減らす効果が期待でき、生産者の売り上げアップにもつながります。野菜の大きさや値段の基準、配送方法等のハードルはありますが、各店長と連携しながら着実に取り組みを進めています。

先輩生産者のアドバイスを胸に

取れたての野菜を毎朝アグリハウス忠生に出荷しています

 髙木さんは、平成22年に父・改造さんが亡くなったことをきっかけに農業を始めました。当初は20年ほど続けていた電気工事の仕事と農業を両立しようと考えていましたが、先祖代々の畑を守るべく退職を決意し、農業に専念しました。
 子どもの頃から農作業を手伝ってきたそうですが、当初は分からないことだらけで苦労したと言います。そんな時に支えてくれたのが、アグリハウス忠生の先輩生産者たちです。「忠生のメンバーはみんな親切に肥やしや野菜の品種のことを教えてくれた。先輩たちの支えがあったからこそ、野菜を出荷できるようになった」と当時を振り返り、目を細めます。

モットーは「支え合う農業」

 露地栽培をメインに野菜作りに励む髙木さんが目指すのは「売り物ということを忘れず、できるだけ見た目と味が良いものを作る」こと。付加価値を高めれば、お客さんは必ず買ってくれると話します。
 「自分はまだまだなので、良いものを作る人を見習い、知識をもらって野菜作りをしています」と謙虚に話す髙木さんは、個人はもちろん、部会全体のレベルアップにも余念がありません。営農支援課と連携し、部会で視察研修や講習会を企画してみんなで土づくりや種苗について学んでいる他、最近では、野菜部会の役員で4種類のカブの試作にも取り組んでいます。今後は、各品種を比較・検討し、結果を発表して他の生産者と情報共有をする予定です。
 過去にアグリ販売部の部長を務めた経験もあり、生産者たちからの人望も厚く、青壮年部会でもイベントや品評会に精力的に参加している髙木さん。取材を通して見えたのは「支え合う農業」をモットーに、優しい笑顔と熱い思いでみんなを引っ張る頼もしいリーダーの姿でした。

きずな.2018年 冬号_No.51掲載