農と食のこと

実直に丹念に 高品質ナスを生産

森政男さん
上小山田町

森 政男さん(82)上小山田町農業を続けて50年 (相原町)
森 政男さん(82)上小山田町

 上小山田地区は新興住宅地と農地や山林が混在した地区ですが、丘をひとつ越えるとまだまだ豊かな自然が多く残っています。そんな自然豊かな森に囲まれた約660平方メートルの区画にナス650本が整然と植えられた畑があります。ナスといえば背丈が50cm程度を想像してしまいますが、この畑のナスは生い茂るように2m程の背丈があります。この畑の持ち主はナスを中心に農業を営んでいる森 政男さん(82)です。

農業祭で都知事賞を受賞

 森家はこの土地で、代々農業にいそしんでいます。森さんは50年に渡り農業に従事し、特にナスの栽培には力を入れています。森さんのナスの畑は今年の東京都農業祭・圃場の部で東京都知事賞を受賞しました。特に今年の悪天候の中、質の良いナスを生産している点が高く評価されての受賞となりました。

では、どのようにして品質の良いナスを生産し提供しているのか、その秘訣を伺ってみました。ナス栽培において重要となるのは害虫対策、防風対策、太陽光、追肥、土壌の湿度管理だそうです。

ソルゴーで害虫・防風対策

 「うちでは害虫・防風対策にソルゴーを使っています」と森さん。ソルゴーとは聞きなれない言葉ですが、トウモロコシに近い飼料用作物の一種だそうです。森さんの行っている「ソルゴー障壁栽培」は天敵を利用した環境に優しい農業技術とされます。ソルゴーにアブラムシがつきそのアブラムシを食べに天敵がソルゴーに来ます。さらにその虫(アブラムシの天敵)がナスの畑に入りナスにつく害虫を捕食します。結果として従来の3分の1程度の殺虫剤の使用ですむという栽培方法です。またソルゴーはトウモロコシと同じように背丈が高く密集するので防風対策にもなりナスが風にあおられ傷がつくなどの品質低下を防ぐことにもつながります。

また森さんの畑では支柱をV字に配置してあります。V字に枝を誘引する事で太陽光が入りナスの実に当たることで鮮やかな紫色の光沢が生まれます。「剪定を丁寧に行わないと影ってしまい品質を落としてしまう。夏の時期に作業を行うのは一苦労ですよ」と笑顔で話してくださいました。

今年から後継者も

森さんのナス畑。枝のV時誘引が特徴。森さんのナス畑。枝のV時誘引が特徴。

 「こういった事は農業試験場の見学や実際に生産地に赴いて見てきたものを取り入れています。ただし農業はその時々の天候に左右されるもの。教科書通りにはいきません。最後は植物の顔を見て、体で覚えていくしかないんです」と語ってくださいました。良い品質を保つ秘訣は森さんの実直に丹念に農業に取り組む姿勢にあるように思えました。

今までは夫婦で作業を行っていましたが、今年からはお孫さんも就農し頼もしい農業後継者が加わりました。今までもこれからも小山田地区の農業は実直に力強く脈打っています。

きずな.2013年 秋号_No.31掲載