農と食のこと

農作業を毎日記録し振り返る
減農薬栽培や食育活動に力を入れ
都市農業の魅力を発信

矢澤 和久さん(66)
本町田

 町田市本町田で農業を営む矢澤和久さん(66)は、年間57種類を育てるベテラン農家。農業を継ぐため父親の他界を機に就農し、今年で16年目を迎えました。毎日の作業を欠かさずノートに記録し振り返りながら、より良い栽培方法を研究し、減農薬栽培にも力を入れています。新鮮で品質の良い自信作だけを農産物直売所へ出荷しており、おいしい地場産野菜を食べてもらうための苦労と手間は惜しみません。地元の小学校と連携し、都市農業の魅力を発信するなど食育活動にも力を注ぐ矢澤さんから農業の真髄を学びました。
(取材担当 町田支店:吉田壮吾)

栽培品目は57種類
毎日の作業をノートへ記録

一つ一つ丁寧に植え付けを行っています

 矢澤さんは娘さんの協力を得ながら、自宅の前にある52㌃の畑と4棟のハウスで年間57種類の野菜を栽培しています。「他の生産者と量や種類、出荷の時期が重ならないように調整し、消費者のニーズに合った新鮮な旬野菜を提供するにはこの57種類が必要だ」と矢澤さんは語ります。

 広大な畑とハウスを管理するため、父親の他界後から「農業ノート」を作成し、日々の仕事を記録し始めました。日付や天候、気温はもちろん、その日の作業や作物の様子や作付けの間隔をセンチ単位で記録しています。何を・いつ・どの場所で栽培したかが一目で分かるように畑の形状を図にした地図も作成しています。毎日欠かさず記録した農業ノートは現在32冊目。最近では新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、体温の記入も行い体調管理にも気を付けています。

農薬は極力使わず
新鮮なものだけを出荷

多品目栽培に取り組んでいます

 「農薬を極力使わずに、新鮮で良い品質の野菜を作りたい」と話す矢澤さんは農薬の使用量を大幅に減らし、作物に合った肥料を研究するなど土づくりにこだわります。農薬と野菜の種類、その効果を一覧にした表を作成し、農薬の種類と散布する量や時期について特に気を使っています。

 出荷する野菜の品質にもこだわりを見せます。出荷するアグリハウスまちだとぽっぽ町田の新鮮野菜市には、収穫した野菜の中でも品質の良い物だけを厳選して出荷しています。中でもこれまで学校給食として提供していたタマネギは大ぶりでみずみずしいのが特徴です。

 矢澤さんのモットーは「日々勉強」。農業ノートを見返しながら試行錯誤を繰り返し、独学で今の栽培方法にたどりつきました。町田市の認定農業者として品質の向上、生産量・出荷量の増加を目指し、おいしい地場産野菜を食べてもらうための苦労と手間は惜しみません。

小学校へ食育活動
農業の魅力を発信

自慢の野菜を出荷する矢澤さん

 矢澤さんは近くの小学校から依頼を受け、校外学習の一環として自宅前の畑で食育活動を行っています。最近は年に2~3回程度行っており、1回当たり80人以上の児童が参加することもあるといいます。実際に畑で栽培した野菜を前に授業をすることで、「いつも自分たちが食べている野菜がどのように育ち、収穫され、食卓に並ぶか体感してほしい」「好き嫌いせずバランスよく野菜を食べてもらいたい」と食育活動にかける思いを語ります。

 今後の抱負について矢澤さんは、「農業を通じて実際に目で見て体感できる食育活動を今後も続けていきたい。消費者に喜んでもらえる新鮮で良い品質の野菜を作り続けることで、農業が地域に無くてはならない存在であることを示していきたい」と熱く語ります。