農と食のこと

地域とのつながり大切に園児と農業体験で交流

熊澤幸雄さん
本町田

熊澤幸雄さん(77) 本町田4代目を継承
熊澤幸雄さん(77) 本町田

 町田市本町田後田支部の熊澤幸雄さん(77)は、妻のシゲ子さん、息子さんの3人で、仲良く季節の野菜を育てています。近所の園児の農業体験を受け入れたり、ウォーキング同好会で世話人を務めたりと、地域とのつながりを大切にしています。趣味で始めた菊栽培は、今では同好会ができるほどの盛り上がりです。

新鮮な野菜近隣住民に好評

 6人兄弟の長男である熊澤さんは、4代目を継ぎ、自宅周辺の2カ所の畑で、夫婦で農業を営んでいます。休日には息子さんも手伝います。畑の前に売店を設け、地域住民へ注文販売しています。「街まで行かなくても、新鮮でおいしい野菜を手に入れることができる。何よりも、ご夫婦の人柄が良い」とお客様から感謝されています。

 近所にある町田市立わかば保育園の体験農業の受け入れもしています。熊澤さん夫婦の指導のもと、園児たちは泥だらけになりながら、ジャガイモ堀りやサツマイモ掘りなどを体験しています。「毎年、生き生きとした表情を見せてくれる園児の訪問が楽しみだ」と話します。

ウォーキング中の会話が息抜き

 以前は父親と2人でメロンやトマト、キュウリなどを生産し、町田市の市場へ出荷していました。日中は収穫、夜は出荷と作業が続き、「目が回るほど忙しかった」と当時を振り返ります。そうした中でも、消防団や神社の役員、安全協会の活動など、地域とのつながりを大切にしてきました。

 熊澤さんは現在も地域の行事に積極的に参加しています。そのひとつが世話人を務めるウォーキング同好会です。危険な箇所はないか現地の下見をし、年に数回、同じ支部の人と遠出をしています。活動は昨年で38回となり、直近では、小田原城周辺をウォーキングし、菊花展を見学しました。「毎回、全員が無事に帰るまで気が気ではない」という熊澤さんですが、ウォーキングをしながら地域の人と交わす何気ない会話が「畑仕事の良い息抜きになっている」ともいっています。

趣味で菊栽培に熱中

 多忙な熊澤さんですが、約40年前から、趣味で菊栽培を楽しんでいます。知り合いから「水をあげていれば大丈夫」と言われ、株を分けてもらったのがきっかけでした。当時は近所に育てている人もなく、毎年のように小田原城や相模原などの菊花展に足を運び、職人さんから肥料や水やりのコツを聞き、独学で栽培方法を学びました。

 栽培を始めてから数年後、本町田の菅原神社の境内に作品を置くことになりました。当初は熊澤さん1人で展示していましたが、栽培する人が年々増え「本町田菅原神社菊同好会」が発足するまでに成長しました。

 現在、会員は7名。熊澤さんが前年の良株の新芽を指し芽で増やし、会員に分けます。「同じ株なのに育て方ひとつで、花の色や形などに変化がある。まるでその人の人柄を表わしているかのようだ。そこが奥深さ」。温暖化の影響などで環境が変わるなか、毎年試行錯誤を繰り返し「昨年よりも良い菊を作りたいという気持ちで、今後も挑戦していく」と熱く語りました。

菊同好会の仲間たちと

菊同好会の仲間たちと

きずな.2014年 夏号_No.33掲載