農と食のこと

ベランダでできるキッチンガーデン

第12回:シュンギク(キク科シュンギク属)

土壌医 藤巻久志

 シュンギクの花を見たことがありますか。

 果菜類は花が咲かないと実が付きませんが、葉菜類や根菜類は花が咲いてしまうと収穫に至りません。普通の栽培ではシュンギクの花を見ることはありません。秋まきしたシュンギクを春まで残しておくと、黄色や半黄半白の美しい花が咲きます。シュンギクはもともと花を観賞する植物で、食用としているのは東アジアだけです。

 シュンギクの収穫方法には、根を付けて抜き取り収穫する「抜き取り収穫」と、脇芽を摘み取り収穫する「摘み取り収穫」があります。「抜き取り収穫」は関西で、「摘み取り収穫」は関東で多く行われています。

 シュンギクの品種は大葉種、中葉種、小葉種に分類されます。「お多福」などの大葉種は主に関西以西で栽培され、脇芽の出が良くないため「抜き取り収穫」されます。全国各地で栽培されている中葉種は、「抜き取り収穫」には株元からの分枝が多い株張り型品種が、「摘み取り収穫」には節間が長く伸びやすい品種が使われています。キッチンガーデンには、脇芽を次々と収穫でき、栽培期間が長い「摘み取り収穫」が適しています。

 シュンギクは発芽も生育も適温が15〜20度で、日当たりの良いベランダなら3月から10月まで種まきすることができます。深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、条間15cmに筋まきします。好光性種子なので薄く覆土し軽く押さえ、たっぷり水やりします。発芽するまで乾燥させないようにし、発芽したら順次間引きし、本葉4〜5枚のときに株間15cmにします。追肥は1000倍の液肥を1週間置きに施します。

 草丈が20〜30cmになったら、下の方の葉を4〜5枚残して株の上部を摘み取り、脇芽を出させます。脇芽が15 cmくらい伸びたら順次収穫していきます。

第12回:シュンギク(キク科シュンギク属)

※藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

※掲載内容は「JA広報通信」より引用したものです。