農と食のこと

ベランダでできるキッチンガーデン

第25回:パクチー(セリ科コエンドロ属)

土壌医 藤巻久志

 1983年に農林水産省が告示した「新野菜名称の統一(38品種)」では、コエンドロ、コリアンダー、シャンサイ、中国パセリは「コウサイ(香菜)」に統一されています。時が経過し、今ではタイ名のパクチーの方が一般的です。

 いろいろな名称のあるパクチーは世界各国で愛され、栽培されています。独特の強い香りがするので、日本ではこれほど好き嫌いが分かれている野菜はありません。嫌いな人は読み飛ばし、好きな人はぜひベランダで栽培してください。キッチンの近くに香味野菜があるととても重宝します。

 パクチーは暑さ、寒さに強く、作りやすいハーブです。発芽適温は15度前後で、春まきと秋まきができます。深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、日当たりの良い所で栽培します。

 種は堅い殻に包まれています。そのまままくと発芽が悪くなるので、種を押しつぶして二つに割ってからまきます。条間20cmの筋まきとし、種が重ならないように種まきします。薄く覆土し、軽く鎮圧して、種が土から水分を吸いやすいようにします。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。

 発芽には10〜15日かかり、初期生育もゆっくりです。本葉2〜3枚になると生育が早くなります。順次間引きして株間を20cmにします。間引き菜も料理に利用できます。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。

 株が旺盛になってきたら、外側の葉から収穫します。1度に1株から多くの葉を収穫すると衰弱するので、各株から若い葉を少しずつ収穫するようにします。花を咲かせ、種を利用する栽培もあります。

 肉や魚料理の臭い消し、サラダ、おかゆなどに利用します。タイ料理のトムヤムクン(エビ入りの辛酸っぱいスープ)には欠かせません。パクチーの強い香りに閉口していた人も、慣れれば好むようになるかもしれません。

第25回:パクチー(セリ科コエンドロ属)

※藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

※掲載内容は「JA広報通信」より引用したものです。