農と食のこと

直売所通じて〝優しさ〟を食卓へ

佐藤 雅史さん
南大谷

佐藤 雅史さん(64) 南大谷佐藤 雅史さん(64) 南大谷

 就農前は中高一貫校で地理を教えていました。世界の国々や地域に興味があり、農作業の合間を縫って夫婦そろって国内外を問わず旅行をするのが楽しみの一つ。芸術にも興味があり、美術館めぐりをするのも好きです。最近、陶芸も始めました。

 59歳で就農し、野菜の多品目経営をする佐藤雅史さん。周囲の生産者が生産していない珍しい品種の栽培にも挑戦しています。庭先に設けた直売所では対面販売がモットーで、雅史さんは野菜の豆知識を、妻の洋子さんはレシピを紹介するなど、生産から販売まで夫婦で力を合わせてやっています。

夫婦二人三脚で生産から販売まで

 雅史さんは就農して5年目。畑とビニールハウス合わせて40アールで、洋子さんと一緒にネギやサトイモ、タケノコ、ラッカセイ、ニンジン、ハヤトウリ、エダマメ、ナス、その他多くの野菜を栽培しています。それらの野菜は、庭先に設けた直売所でほぼ毎日販売しています。スーパーでは見られない目新しい野菜も生産し、買い物に来た地域の人たちに紹介するのが楽しみの一つです。

 当初、珍しい野菜を店先に並べても、食べ方がわからないなどの理由から売れませんでした。そこで、野菜の特徴を説明するようにしました。お客さんとの会話を大切にすることで「要望や意見を知るだけでなく、自分が知らない野菜の情報などを教えてもらうことも多い」と言います。お客さんも、雅史さんと直接話すことで、どのように作られた野菜かが分かり安心感があります。

 洋子さんもサポートを欠かしません。野菜を店の棚に並べる時には、赤、緑、黄のピーマンを3色バランス良く1つの袋に包装するなど、彩りを考え見栄えを良くします。ちょっとした工夫で売れ行きが違ってくるので、腕の見せどころです。また、おいしく食べてもらおうと、レシピも紹介しています。

仲間に支えられ出荷販売も実現

 就農当初、野菜を作っても売る場所が見つからず苦労しました。農業のことで相談できる仲間を求め、町田地区の生産者との人脈づくりからスタートしました。

 JAの野菜部会に加入し、町田支店の直売所へネギの出荷を始めました。取れたてをアピールしようと泥付きで店頭に並べましたが、ほとんど売れません。悩んでいると野菜部会の仲間が、袋詰めの仕方など、店の棚に並んだ時の見栄えを良くすることが大切だと教えてくれました。

 仲間のアドバイスのおかげで販売のコツをつかみ、野菜も徐々に売れるようになりました。今では、庭先の直売所、町田支店の直売所、町田市が運営する「ぽっぽ町田」の3カ所で販売しています。「まったくの素人だった自分を、野菜部会の仲間がここまで育ててくれた」と感謝しています。

ニーズに応えてネギの通年販売目指す

 「ニンジンが甘くておいしい」など、野菜を買ってくれたお客さんから感想を言われることがうれしい雅史さん。「1年を通してネギを買えるようにしてほしい」というお客さんの要望に応えるため、いろいろな品種のネギを栽培し通年販売を目指しています。また、人気のエダマメも需要期に集中して生産し、収量を増やしていく考えです。

 最初は苦労したものの、最近では農業の奥深さを楽しむ余裕も出てきました。趣味で始めた陶芸と面白いと思えるようになった農業を結び付けたいとの思いが募ります。「自分で作った皿に、自分で育てた野菜を使った料理を盛り付けるのが夢」と語ります。

お客さんと会話を楽しむ雅史さん。奥は妻の洋子さん
お客さんと会話を楽しむ雅史さん。奥は妻の洋子さん

きずな.2017年 冬号_No.43掲載