父との約束を守り後継ぎに
八木節子さん
相原町
八木節子さん(61) 相原町
JA町田市園芸部会堺支部唯一の女性部員である八木節子さん(61歳)は、八木園芸の2代目として活躍しています。30種類ほどの切り花を生花市場に出荷。主な品目は、ダリア、鶏頭(ケイトウ)、女郎花(オミナエシ)などです。正月には南天(ナンテン)も出します。特にダリアは父親の代から50年近く栽培する愛着のある品目です。現在は、90歳で現役の元気な母・愛子さんと、会社員の娘・綾乃さんの3人で仕事を切り盛りしています。
病床から父親が手ほどき
「花は私が作るよ」――。節子さんは、父親と交わした約束をしっかりと守っています。八木園芸を継いだ当時は、会社勤めで管理職をしていました。仕事は充実していましたが、「これから」という時に、父親が病に伏せてしまいました。「家族の転機」ともいえる一大事に、「父親と交わした約束」もあり、農業を継ぐ決意をしました。
子どものころは「草むしりをしていたぐらい」でした。しかし、ダリアを作る父親の姿は目に焼き付いていました。最初は失敗だらけで、水やり、消毒などの現場の感覚は、すぐには身につきませんでした。鶏頭の栽培では、入院中の父の指示で種を少しずつまき、3年かけてまき終えて花が咲いたころ、それを見届けるように父親は他界しました。「もっと花の話を聞いておけば良かった」と節子さんは話します。
2足のわらじで精進
その後は、仕事と農業の二足のわらじをはく毎日でした。朝5時から8時まで畑仕事をし、それから勤めに通い、帰宅後の夜6時から7時まで畑に戻るという生活をくり返しました。「情熱を注ぎ手間をかけただけ、結果に表れることがやりがい」との思いが支えになりました。後を継いで4年目を迎えたころ、生花市場の人に「お父さんより、良い花を作るようになったね」と言われたことが励みになりました。そうした言葉を支えに、花作りに精進し、今では、節子さんが育てた花は、地域住民にも高く評価されています。
「地域の和」を大切に
節子さんは、農業を通じて出会った人たちとのふれあいを大切にしています。「地域の和」を生むふれあいの場をもっと増やしたくて、町田街道沿いに花壇を整備したり、花の会やフラワーアレンジメント教室を開いたり――と、さまざまな取り組みをしています。
毎週土曜日には道の駅停車場「大とびら」で地域の農家約30人と農産物の販売をしています。当初は、参加者は女性だけでしたが、熱心に活動をする中で、男性も増えてきました。
今年度から、新しい試みも始めました。荒地を購入して開墾し、ダリアや鶏頭を新たに作っています。ダリアは赤や黄色で大輪のものは値段が高くなりますが、他の色や小さいダリアは手ごろです。節子さんは「手ごろなものを増やすことで、もっと花を身近に感じてもらいたい」と考えています。そして、花を使ったふれあいの場を作ろうと、計画を練っています。
きずな.2014年 夏号_No.34掲載