農と食のこと

農作業事故にご用心!

 少しずつ暖かくなり始め、農作業においては、種まきや土づくりが始まります。畑に堆肥や土壌改良剤をまいてトラクターによる耕うん作業をされる方も多いことでしょう。
 春の耕うん作業で毎年のように起こっているのが、トラクターや田植え機の転倒・転落事故です。このような事故は、大けがや死亡事故につながることも多く、大変危険です。乗用トラクターの事故の例を紹介します。

事例1

キーワード:重心位置、登坂速度、片ブレーキ

概要

 代かき作業の後、水田から道路へ出る時、前輪が持ち上がった。慌ててブレーキを踏んだところ、乗用トラクターが左へ急旋回して横転し、投げ出されて足を骨折した。

原因
  1. 進入路を上る時、ロータリーを上げていたため重心が上に移動し、不安定になって前輪が持ち上がった。
  2. 代かきの速度段のままで、エンジン回転速度も下げなかったので、登坂速度が速すぎた。
  3. 左右独立のブレーキペダルを連結していなかったため、片ブレーキになって急旋回した。

事例2

キーワード:斜めに進入、機体のバランス、焦り

概要

 乗用トラクターにあぜ塗り機を装着して、農道から1.5m下の水田に、通常の進入路でないのり面角度30~35度の所から斜めに入ろうとした。トラクターは右側へ180度転倒して、U字溝の上に乗った。本人はシートベルトを装着していなかったので、投げ出されてU字溝の角で頭を打った。運良く溝の中へ落ちたためトラクターの下敷きにはならなかったが、頭蓋骨陥没で9カ月入院した。

原因
  1. あぜ塗り機を装着して、右を谷側として斜めに進入したため機体のバランスが崩れた。
  2. 地域で指導的立場にあり、普段から安全運転に気を付けていたが、雨が降り出して気持ちに焦りが出て、作業開始位置に近い所から無理に進入した。

事例3

キーワード:片ブレーキ、走行速度、油断

概要

 乗用トラクターで水田を見回りに行く途中、緩い下り坂(コンクリート路面)で直角のカーブを左折時にブレーキを踏んだところ、左右独立のブレーキペダルを連結していなかったので、片ブレーキになって急旋回し水田に転落した。
 シートベルトを装着していなかったので、傾斜45度で長さ3.6mののり面へ投げ出され、後ろから落ちてきたトラクターで腰を打撲し入院した。幸い安全フレームが付いていたので完全には下敷きにならずに済んだ。

原因

 道路走行時に左右独立のブレーキペダルを連結することはJAなどで十分注意を受けて知っていたが、時速15キロくらいで走行するときは問題ないと思って油断していた。




 平成28年の農作業死亡事故件数は312件で、前年より26件減少しました。
 事故区分別では、農業機械作業によるものが217件(69.6%)、農業用施設作業によるものが14件(4.5%)、機械・施設以外の作業によるものが81件(26.0%)となっています。年齢別では、65歳以上の高齢者による事故が254件と、死亡事故全体の81.4%を占めています。
 事故を起こさない・起きないように細心の注意を払って、いま一度取扱説明書をよく確認し、安全な農作業に取り組みましょう。

きずな.2018年 春号_No.48掲載