農と食のこと

受け継がれてきた農地を守りたい

浅沼 稔さん
木曽西

浅沼 稔さん(53)木曽西浅沼 稔さん(53)木曽西

 忠生地区下横町支部の浅沼稔さん(53)は、「代々受け継がれてきた農地を守りたい」という思いから一念発起。平成26年末をもって研究職として勤めていた会社を退職し、植木農家となりました。妻の千恵子さんも稔さんの思いに共感し、野菜作りに挑戦。「会員制野菜宅配サービス」をスタートしました。夫婦ともに切磋琢磨する姿にこれからの活躍が楽しみです。

研究職の経験生かして植木栽培

 町田市木曽地区にある新興住宅地の小道を少し入ると、緑がきれいな植木林が広がり、心を和らげてくれます。浅沼さんが栽培する梅や桜、ツツジなどの植木林です。
浅沼さんは、平成26年末まで会社勤めをし、廃プラスチックの再利用について研究していました。博士号も取得しています。

 そんな浅沼さんが、農業の世界を目指した一番の理由は、「代々受け継がれてきた農地を守りたかったから」。浅沼さんの先代・稲次郎さんは、JA町田市園芸部会の創設に携わり、植木で農林水産大臣賞を受賞したこともあります。

 「これまでの仕事とは全く違う土俵に立ち、勉強の毎日。ただ、これまでの研究の知識や経験も少なからず役立つこともあるはず」と、現職時代と変わらぬ研究心で、父の思いを受け継ぎます。

植木に語りかけ愛情をもって育てる

 浅沼さんは園芸部会に所属し、先輩組合員に栽培のノウハウを教えてもらうだけでなく、本で情報を得るなど試行錯誤の毎日。その努力が実って、平成27年の町田市農業祭農産物品評会に出品した「ワビスケ」が町田市議会議長賞を受賞しました。

 「樹木の成長には土壌や肥料も重要ですが、樹木に語りかけながら育てています」と、植木に愛情を注ぐことを大切にする浅沼さん。また、「お客様のところで植木が駄目にならないよう、お客様目線で生産しています」と話します。そんな思いから、最近の住宅事情を踏まえ、大きくなり過ぎない植木の生産にも挑戦しています。

作った野菜を無駄にしたくない

花をつけた梅を楽しむ浅沼さんと妻の千恵子さん花をつけた梅を楽しむ浅沼さんと妻の千恵子さん

 先代から受け継いだ農地を守りたいという気持ちは、千恵子さんも同じです。稔さんと共に試行錯誤しながら、さまざまな野菜を作ってきました。せっかく作った野菜を無駄にしたくないと、友人との会話をヒントに始めたのが「会員制野菜宅配サービス」です。「栽培中に農薬を使わない」ことを売りに、初めは月々小額の会費で千恵子さんの友人たちへ、月2、3回の宅配から始めました。

 それが口コミで広がり、今では10人を超えるまでに。最近は、イタリア野菜の栽培にも力を入れ、会員が料理しやすいよう「おいしい食べ方レシピ」も自作し、一緒に届けます。会員からは、「その日の朝収穫した新鮮な野菜が自宅に届くのでありがたい」「野菜の楽しみ方を教えてくれるのでとてもうれしい」といった声が聞かれます。

 千恵子さんは今年2月、農林水産省が推進する「農業女子プロジェクト」のシンポジウムにも参加。意欲的な女性農業者に刺激を受け、更なる飛躍を目指します。
今後の活躍が楽しみな浅沼さんご夫妻です。

きずな.2016 春_No.41掲載