種類豊富な野菜を完熟、とれたてで提供
細野 和彦さん
南町田
栽培品目が多いため、畑で作業している時間が長くなりがちです。そんな時は、特技のスケートボードでリフレッシュ。小学校3年生から始め、中学生のころには人に教えるほどの腕前でした。「昔ほどではないけれど……」と言いますが、今でも軽快に乗りこなします。
約25種類の野菜を生産し、南地区のJA農産物直売所のもり立てに一役買っている細野和彦さん。元調理師とあって、野菜の鮮度やおいしさにはこだわりがあります。畑へ直接買いに来てくれる地域住民も多く、喜んで食べてくれる人たちにもっとさまざまな野菜を提供しようと、少量多品目経営を目指しています。
調理師の経験生かし消費者目線の野菜づくり
細野さんは元調理師。祖父母が亡くなり、31歳で農業を継ぐことを決めました。50アールの畑の管理を一人でこなす忙しい日々ですが、もともと「ものづくり」が好きな細野さんにとって野菜づくりは調理とは違った魅力があり、やりがいを感じています。
細野さんの畑は、マンションや戸建てに囲まれた住宅地にあり、近隣の住民が直接畑に野菜を買いに来ることがあります。そのため、農作業は午前中に終わらせ、午後は野菜の販売をすることもあります。
夏野菜で特に人気の品目は、トウモロコシです。多い時には50本まとめて買って行く住民もいます。トウモロコシは鮮度が落ちるのが早いため、少しでも新鮮で甘い状態で食べてもらおうと、注文が入ってから収穫しています。「ベストな状態でお客さんの手元に届けたい」というのが、こだわりです。
手間を惜しまず苗づくりから
細野さんは、野菜の苗は購入せず種から育てます。費用を抑えるためでもありますが、自分で育てることで予備の苗も作れ、風で苗が折れるなどしてもすぐに植え替え、収量を確保できます。
また、常に低コスト・高品質を目指す細野さんは、昔ながらの手法には、機械にはない良さもあると考え、農業機械の所有は必要最小限にしています。特に、マルチを張る作業は手作業です。引っ張る強さを微調整できるので、「機械で張るよりも風でめくれにくい」と言います。
これからの季節、農家を悩ませるヒヨドリによる食害にも工夫を凝らします。細野さんの畑では10万円以上の被害が出たこともありました。対策として、ネットを被せる方法がありますが、それだけでは網目から作物を食べられてしまいます。そこで、細野さんは支柱となるパイプを立て、ネットをテント状に張るようにして、被害を減らしています。
購入者の「おいしい」が励みに
「よりおいしい野菜を」と励む細野さんの背中を押してくれるのは、消費者からの喜びの声です。例えばトマトは、完熟してから収穫した方が栄養価も高く、味が良くなります。そこで、細野さんは完熟トマトを販売するようにしています。お客さんから「トマトを食べられなかった子どもが、細野さんのトマトのおかげで食べられるようになった」という、うれしい報告がありました。
トウモロコシも、北海道出身の方から「いつも食べ慣れているトウモロコシよりも甘くておいしい」と言ってもらえた時には、自信につながりました。消費者の声援を受け、細野さんが目指しているのは少量多品目の経営です。現在栽培している野菜の植付け量を減らし、その分、品目の数を増やします。最近では、セロリやゴボウの栽培を始めました。ゴボウは収穫のしやすさと、料理のしやすさを考え、「サラダごぼう」という短い品種を選びました。常に、料理して食べる人のことを考えながら野菜を栽培する細野さんです。
こまめに畑を見回り野菜の生育状況を確認する細野さん
きずな.2016年 秋号_No.42掲載