農と食のこと

定年後に妻の実家の農地を継いで就農
20種の野菜と菊づくりで地元に元気を

村野 敏男さん(66)
野津田町

 町田市鶴川地区で野菜を栽培する村野敏男さん(66)は、勤めていた紙器加工会社を60歳で定年退職し、高齢になった妻の父親の農地を継いで農業を始めました。シニア就農研修会で1年間学び、アグリハウスの先輩方にも耕作のノウハウを教わって、本やテレビでの自学自習も欠かさなかった6年間。育てた野菜は品評会で高評価を得るまでになりました。趣味の菊づくりでも、地域に笑顔と元気を届けています。
(取材担当:五十嵐遼、島拓也)

野菜は品評会で高評価
昨年から四季彩の杜で販売

村野敏男さん(写真左)と妻の文子さん。夫婦で20種の野菜を栽培

 村野さんは野津田町に自宅を構え、その近くに2反(20アール)ほどの畑を所有し、年間20種類ほどの野菜を栽培しています。アグリハウスや、昨年6月からは町田薬師池公園「四季彩の杜」西園にある地場食品直売所にも出荷を始めました。中でもキャベツとブロッコリーは品評会で高い評価を受け、おいしさと地元野菜の鮮度の良さで人気を集めています。

 野菜部会を通して土壌診断を毎年実施し、畑の状態にも気を配りながら、品質の良い野菜が少しでも多く出荷できるように努力を惜しまない村野さん。しかし、自らの力が及ばない天候で出来栄えが左右されることも。「一生懸命に育てた野菜が出荷できないこともあり、苦労しました」と、6年間の歩みを振り返って話します。

種から育てるこだわり
妻と二人三脚で農作業

野菜はこだわって種から育てています

 村野さんの野菜づくりのこだわりは、種から育てること。小さい種から大きな野菜に育つ、その過程を大事にし、苗づくり、施肥や消毒なども工夫して、日々農業に取り組んでいます。妻の文子さんとは結婚してちょうど40年。農業を始めてからは毎日二人で一緒に作業に当たっています。結婚して以来、父親の農業を手伝ってきた文子さんは、頼りになる経験者。知恵を借り、互いに意見を出し合って、試行錯誤を繰り返してきました。耕うんや防除は村野さんが、文子さんは荷造りを行うなど、それぞれが得意とする作業を分担し、それ以外は二人で協力し合いながら効率良く仕事を進めています。

趣味の菊づくりに20年
町田市長賞の表彰も

見事な大輪が並ぶ町田市菊花展

 村野さんの趣味は菊づくりです。20年ほど前に「鶴川菊友の会」に入り、毎年、薬師池公園で開かれる「町田市菊花展」や「JA収穫感謝市・植木市」に出品してきました。

 菊づくりは5月の挿芽から始まり、3本仕立ての基本となる誘引、定植、輪台の取り付けなど、とにかく手間が掛かります。特に苗づくりは重要で、花の咲き具合もこの苗づくりで決まると言われるほど。大輪を咲かせるため、手塩にかけて育てています。これまでに町田市長賞を受賞するなど数々の賞を受賞してきました。

 「立派に咲いてくれた菊の花が入賞したときには喜びを感じます」と村野さん。昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でイベントが中止になり、お披露目の機会がなくなってしまいましたが、「鶴川菊友の会」の会長を務め、地域の人たちに講習会で菊づくりの魅力を伝えています。

 「コロナ禍で苦労されている方がたくさんいらっしゃると思います。良質な野菜を提供し、元気の源になってくれればうれしいです」と語る村野さん。新鮮な野菜と目に鮮やかな菊の大輪の美しさで、周りの人たちを笑顔にしています。