地場産野菜を通じて
農と食について多くの人に伝えたい
河原 敏子さん
弘さん
本町田
住宅街が広がる本町田に河原敏子さんの畑はあります。ダイコンや珍しい白ナス、サトイモ等、年間で約30品目の野菜を育て、アグリハウスまちだをはじめ、地元のスーパーの特設コーナーへ出荷しています。
また、一般の方にも農業に親しんでもらうため、敏子さんの農場は町田市の体験農園事業に参加しています。今回は、農業を通して育まれた敏子さんの大きな夢と挑戦について紹介します。
(取材担当 町田支店:近藤貴拓)
思ってもみなかった
農業との出合い
現在、父・弘さんと2人で農業を営む河原敏子さん。実家が農家ではあったものの、卒業後は事務関係の仕事に就き、充実した日々を過ごしていたといいます。転機が訪れたのは、およそ15年前。弘さんの体験農園にお手伝いとして参加し、参加者からの質問にうまく答えられなかったのが、就農のきっかけでした。当時を振り返り、敏子さんは「もっと野菜と向き合い、たくさんの人に野菜の良さを伝えられるようになりたいと思った」と話します。
若い頃は自分が農業に携わるとは想像もしていなかった、と話す敏子さん。農業知識も経験もゼロの所から思い切って農業の世界に飛び込み、弘さんの厳しい指導のもと、農場の管理から野菜の出荷まで学びました。弘さんの作業の様子を観察して気が付いたこと、ハウス管理、土の成分や施肥、防除から野菜をおいしく食べてもらう方法まで、学んだことを一つひとつノートに書きながら農業の知識を深めていったといいます。「父の指導は厳しくて今も大変。それでも、自分が育てた野菜をお客さまが喜んで買っていく姿を見ると、嬉しさが込み上げてくる」と笑顔で話しました。
心おきなく地場産野菜を
食べてもらいたい
普段は敏子さんと弘さんの2人で農場を運営し、弘さんが農場の管理と出荷を主に担当しています。しかし、3年ほど前に弘さんが体調を崩したのを機に、徐々に敏子さんが管理や出荷も任せられるようになってきました。今では敏子さんを手伝うため、ご主人と娘の美紅さんも仕事の合間を縫って、週3日ほど農場の仕事を手伝っています。
家族4人で力をあわせ、年間で約30品目の野菜を育てている河原さん一家。食卓に欠かせないダイコンやカブ、サトイモの他にも、白ナスといった珍しい品種の野菜もポットから育て生産しています。
野菜をはじめ、さまざまな食品価格が高騰している昨今の情勢を見て、敏子さんは「心おきなくおいしい地場産野菜を食べてもらいたい。そのためにも、ニーズにあわせて野菜の品目と収穫量を増やし、少しでもお財布に優しい野菜を食卓に提供することが目標だ」と力強く話しました。
農業や地場産野菜に興味を
持ってもらうための挑戦
敏子さんには、農業を通じてこれから挑戦したいことがあるといいます。「毎年、シバヒロで開催される町田市農業祭のような大きな農業イベントをJAと近隣の農家と協力して開催したい」と目を輝かせます。そして、もう一つ「キッチンカーで地場産の野菜を使った料理を提供したい」と楽しそうに話します。敏子さんの挑戦は、たくさんの人に町田市で採れた新鮮な野菜を食べてもらい、農業や地産地消に興味を持ってもらうことが目標です。そのためにも今の時代にマッチした販売方法やイベントの企画を立て、さらに農業を盛り上げていきたいと意気込みます。こうした考えは弘さんが15年前から行っている、町田市の体験農園事業を通じて育まれました。弘さんは、農園を訪れた人々に農業の楽しさと地場産野菜のおいしさを伝えるため、年に一回すいとんを振る舞ってきました。現在はコロナ禍で中止となっていますが、このイベントは、地元の人々に愛される恒例イベントでした。
「大切に育てた野菜を食卓に届け、おいしく食べてもらえること、知ってもらえるのはとても幸せなこと。この素敵な循環を次の世代につなげていきたい」と敏子さんは胸を張って話してくれました。