農と食のこと

ベランダでできるキッチンガーデン

第2回:ナス(ナス科ナス属)

土壌医 藤巻久志

 野菜の品種は交配種が主流となり、固定種の地方品種はどんどん少なくなっています。そんな中、ナスはいまだに地方独特の品種が栽培されています。大長、中長、小丸など形の違いだけでなく、果皮が白や緑のナスもあります。

 家庭菜園では好きな品種の種を取り寄せて栽培するのが一番ですが、ナスは育苗が難しいです。インド原産のナスの発芽適温は25〜30度、生育適温は20〜30度です。種まき・育苗期の2〜4月に適温を長期間確保するには、加温施設が必要です。

 ベランダ菜園では5月に苗を購入して栽培するのが一般的です。以前は中長ナスと米ナスくらいでしたが、今は数多くの品種の苗が店頭に並んでいます。

 日当たりと風通しの良いベランダで、10号(30cm)以上の鉢に市販の培養土を入れます。深植えにならないように苗を植え、倒れないように仮支柱を立てて軽くひもで縛っておきます。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。

 活着すると1番花が咲き始め、側枝が伸びてきます。主枝と1番花のすぐ下から出てくる側枝2本を残して、他はかき取ります。仮支柱を50〜60cmの3本の支柱に替え、各枝を誘引します。

 ナスは水で太る野菜です。水切れさせないように毎日たっぷり水やりし、乾燥防止のために株元にわらやピートモスなどを敷いておきます。

 開花後、最初の頃は25〜30日、最盛期は15日以内で収穫できるので、はさみで切り取ります。

 7月中旬ころ、暑さで株が弱ってきたら、思い切って枝の半分くらいを切り詰めます。主枝と2本の側枝に2枚以上の葉が残るようにします。しばらくすると元気な新芽が伸びてきて、9月いっぱい収穫できます。数百円の苗で、その数倍の価値のある栽培が楽しめます。

 取りたて新鮮なナスを、和食なら漬物や天ぷらに、イタリアンならパスタやピザに、中華ならマーボーなどにご利用ください。

第2回:ナス(ナス科ナス属)

※藤巻久志(ふじまきひさし):種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

※掲載内容は「JA広報通信」より引用したものです。