農と食のこと

ベランダでできるキッチンガーデン

第19回:ビート(ヒユ科フダンソウ属)

土壌医 藤巻久志

 ビートやホウレンソウはアカザ科に分類されてきましたが、DNAが決める新分類ではヒユ科になりました。

 世界三大河川や世界三大通貨などといいますが、世界三大スープはボルシチ、フカヒレスープ、トムヤムクン、ブイヤベースの四つの中から三つに絞れないようです。

 ロシア料理のボルシチは、ビートやタマネギなどの野菜と牛肉を炒めてからじっくり煮込んだスープです。日本ではビートの青果が入手しにくいため、家庭の食卓に上ることは少ないです。

 ビートがスーパーに並んでいなければ、自分で作りましょう。ビートの種はホームセンターや通信販売などで入手できます。栽培も簡単でベランダでもできます。ビートは冷涼な気候を好み、夏と冬は品質が悪くなるので、春と秋に種まきします。

 深さ15cm以上のプランターを日当たりの良い場所に置き、市販の培養土を入れます。種皮が堅いので、一昼夜水に浸すと発芽が良くなります。株間15cmで、1カ所に3〜4粒の点まきをします。種の2〜3倍の覆土をし、軽く鎮圧します。

 ビートは多胚種子といって1粒の種から複数の芽が出ます。順次間引きして1本立てにします。追肥は1週間置きに1000倍の液肥を施します。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。根が直径5〜6cmになったら抜き取り収穫します。収穫が遅れると肌が粗くなり、肉質も堅くなります。

 真紅の根を輪切りにすると、断面は同心円状に彩られています。生のままサラダにすることもできます。

 皮をむいて二〜四つに切ってからゆでると、ゆで汁が鮮紅色になります。スープや酢漬けなどにしますが、ゆで汁もダイコンやカブ、ミョウガなどの色付けにも利用できます。

 『カチューシャ』や『ともしび』などのロシア民謡を歌いながらボルシチを煮込めば、よりいっそうおいしくなると思います。

第19回:ビート(ヒユ科フダンソウ属)

※藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

※掲載内容は「JA広報通信」より引用したものです。